Head社はPWRのネーミングのラケットを数種類出しています。
Graphene Touch Instinct PWR、Graphene Touch Speed PWR、Graphene XT Prestige PWR、Graphene XT Radical PWR。
今のところエクストリームに設定はありませんね。
PWRはおそらくPowerの略だと思われます。
なにをもってパワーなのか?
一般的にラケットのフレームが厚いと反発力が増す-の認識が有り、他社のパワー(反発力?)を売り物にしたラケットもそうなっています。
いわゆる厚ラケですね。
※フレームが厚いとしなりが減り、ラケットをスイングするパワーを、あまりロスする事なくボールに伝えられるからと言われています。
みな一様に、面が大きく、長さも長くしてあります。
では、この手のラケットはどのようなプレーヤーを対象にしているのでしょうか?
今、手元にプレステージPWRとラジカルPWRがあります。
少し長めに借りられたので、おおまかですが特徴は掴めました。
インステインクトPWRとスピードPWRは、Touchが付く前のモデルを試打した事がありますし、この両モデルはスペック的にあまり変わっていないようです。
インステインクト・タッチPWRとスピード・タッチPWR
インステインクト・タッチPWR 重量 230g バランス38.1cm スウィングウェイト305 ビーム厚 28-29-29mm
スピード・タッチPWR 重量 255g バランス35.3cm スウィングウェイト316 ビーム厚 27.5-28-29mm
面の大きさは115で長さは27.3で長尺です。
両モデル(前モデル)とも試打した感触は、80年代に出てきた厚ラケの悪いイメージそのままで、軽すぎ、飛びすぎでコントロールがつけづらい。
軽量度にしても、大きなラケットで軽量なのと、普通サイズで軽量なのでは全然感触が違います。
打っても振ってもスカスカ?な感じですね(笑)
では、プレステージPWR、とラジカルPWRはどうでしょうか?
プレステージPWR 重量 270g バランス34.67cm スウィングウェイト324 ビーム厚 26-26-28mm
ラジカルPWR 重量 265g バランス35.3cm スウィングウェイト313 ビーム厚 26-25-23mm
面の大きさは、プレステージPWRが107、ラジカルPWRは110、長さはどちらも27.3インチ。
スペックだけ見ると、前の2種に比べ重量が重く、ビーム厚もそれほど太くないのですが・・・
この両モデルは前者とはまったくコンセプトが違います。
以前の記事でRev Proシリーズについて書いていますが、このPWRのシリーズについても同じことが言えます。
http://scrooge.at.webry.info/201602/article_1.html
ヘッドのインスティンクトとスピードのシリーズは、他のシリーズと同じネーミングを持つラケットでも、共通の概念は無いようです。
※ちなみに、エクストリームシリーズも特異な存在です。また、今シーズンからインスティンクトとスピードのRev Proモデルは廃止されたようです。
インスティンクトPWRとスピードPWRは、軽量・長尺という従来の厚ラケのイメージ通りのモデルです。
まったくの初心者でも使えるでしょうね(だからと言って初心者向けではありません。)
プレステージは無論、ヘッドの最上位シリーズで、いわく、玄人好みの難しいラケットです。
それに初心者向けモデルがあるのは、そもそもおかしな話です。
フレームは厚いのですが、スイングウェイトが大きく、なおかつ長尺なので、しっかりスイングの形が出来ていないと使いこなせません。
プレステージの他のモデルを使っていて、振るのがだんだん辛くなってきた人向けでしょうか?
インスティンクトPWRとスピードPWRも、同じシリーズのラケットの特徴は残してあるので、おそらく同様の人を対象にしているのでしょう。
さて、最後のラジカルPWRですが・・・
これは、他のPWRモデルと違うコンセプトで創られています。
ラジカルのネーミングが付いていますが、共通のモノは、カラーリングくらいで、まったく異質のモデルです。
ビーム厚も、実はエクストリームとほとんど同じで、特段、厚ラケの範疇にも入りません。
なによりプレステージPWRより細いのです。
重量もエクストリーム・レフプロと5g違うだけです。
PWRの名前を冠していますが、スペシャルモデルと言っても良いですね。
特徴的なのは面の形です。
こちらにも書いています。
http://scrooge.at.webry.info/201507/article_1.html
このようなディアドロップ(涙)型の面を持つものは他社にもあります、本来ならVゾーンになるべき部分にまで面が占めています。
それと、ASPを導入しています。
ASPについては以前も書いていますが、ストリングスの本数を減らす事によるストリング同士の摩擦を軽減する事でスピンをかかりやすくするものですが、オリジナルの発案のウィルソン社のラケットを含めて、一様にクロスの本数を減らすタイプでした。
ところがこれは、メインの本数を減らすようになっています!
通常、ヘッドのモデルはメインが16本ですが、グロメットを付け替えて、メインを14本にクロスを19本にする事が出来ます。
むろん、16×19にする事も出来ますが、このモデルの本領は14×19にあります。
クロスの本数を減らしたラケットは、過去にウイルソンのスティームSシリーズを使ってましたが、自分には合わないものでした。
その後、ウイルソン社も縦横の本数のバランスを変えたラケットを出していますが、一貫してクロスの本数を減らしているのに変わりはありません。
推測ですが、クロスの本数を減らす事は、コントロール性と反発力を減らす影響があるようです。
トップスピンのメカニズムから考えるに、回転を生み出しているのはメインストリングスです。
※ラケットを横に振る動き(ストローク等)において。ラケットを縦に振る動きのサーブ・スマッシュ等では、クロスストリングス。
また、言及したものは見た事がありませんが、ストリングスの長さもいろいろかかわるのでは?と考えています。
一連のティアドロップ型のラケットは、みなメインストリングスが長く、クロスストリングは、通常型とほぼ同じ長さにしてあるものが多いのです、
一概にデカラケやオーバーサイズと言っても形状に違いがあり、必ずしも縦横共に広い訳ではありません。
打感は柔らかいのですが、クロス減らしのラケットとは違い、抜けた様な感覚ではなく、しっかり芯がある感じがします、コントロール性もさほど失われていませんね。
話は変わりますが
実はここ数ヶ月、肩痛が治まりません。
テニスが原因なのは明らかですが、他の部分の痛みや筋肉痛は、一週間くらいテニスから遠ざかると回復していたのですが・・・
少し治まっても再開するとまた痛みます、完全には治らないかもしれませんね。
かといってテニスを止めたくはないので、出来るだけ肩に負担の少ないラケットを、暫定的に使ってみようと考えていました。
現在メインのエクストリーム・レフプロは、軽量ですがスイングウェイトが非常に大きいラケットです。
そのせいなのか、バックスイングからフォワードスイングに移る時の切り返し時に痛みが走ります。
他に残してある、ピュアドライブ・チームとピュアドライブ260を使ってみたところ、痛みの度合いがかなり軽減されます。
皮肉にもスイングウェイトの大きなラケットを選んできて、それに泣いたかたちですね(笑)
当然ながら、今迄通りのスイングスピードで振るのも厳しくなりました。
話を戻して
厚ラケは80年代に登場しましたが、定着するには至りませんでした。
やはり、飛びすぎるのと、コントロールしづらいのが原因だったのでしょう、各社とも厚さを競うようなラケットを発売したのも一因であったと思ってます、
ただし、フレームの厚さの効用は認知されて、これ以降フレームは以前より厚くなりました。
現ピュアドライブやピュアアエロなどは、以前なら厚ラケの部類に入りますね。
バボラ社のラケットは衝撃吸収性に優れていますが、フレームを厚くして得られる反発力を、衝撃吸収に取られる分に回してバランスを取っているのでしょう。
では、なぜ面を大きくして、全長を長くし、軽量にしてるのでしょうか?
面の大きさと反発力の相関関係はあまり無いという実験結果があります、長く軽くはスイングスピードを上げやすくする為でしょう。
ラケットをスイングする運動エネルギーの量と、ボールの飛距離は相関関係に有ります。
また、スイングスピードが早いと、ボールスピードも上がります。
厚ラケは飛び過ぎるのではなく、通常のラケットと同じ感覚で振るから飛ぶように感じるのです。
自分の感覚では、従来の70~80%のスイングスピードで振っても、同じボールスピードが得られる感じがします。
逆に言えば、通常のスイングで20~30%スイングスピードをUPした効果を得られる事になりますね。
早いスイングスピードと同等の効果を得られるのなら、トップスピンもより回転が増すのでは?
と考えるのも道理です。
スイングスピードとトップスピン回転は、ナダルの例を見ても相関関係があると思われます。
むろん、斜め上方へのスイングと、ヒットポイントでの面に角度を付ける前提です。
もしそれが出来るのならまさに魔法のラケットなのですが(笑)
Head社はかつてボールが当たる衝撃で硬度が増す樹脂をフレームに埋め込むという、ハイテク?ラケットを発売した事があります。
新素材の導入や新開発に意欲的なメーカーと言えるでしょうね。
※最近、Head社はマグネシウムをブリッジ部分に使ったコンポジットラケットを発売しました。
ラケットの素材は、カーボングラファイトに落ち着いた感があります、おそらくコストや生産性の面からでしょう。
そうなると、どうしても形状に関心が向かいます。
ティアドロップ型のラケットも以前からあるものですが、最近のポリエステルストリングと組み合わせた時にどうなのか?
フレームについても、最新のコンピュター3Dデザインで、サイドビームの厚さも一様ではなく変化をつけてあります。
特にVゾーン周りは複雑な形状になっています、この辺りは以前のティアドロップ型とは違います、より進化しているのかもしれません。
ASPでのメインストリングスの本数を減らす効果も、特異な形状の面でより活かせてるのかもしれませんね。