こちらの動画を
横からのアングルなので特徴がわかりやすい。
こちらはスローで、横からと正面からを対比させてあります。
テイクバックでのラケットの引き方に特徴があります、大概の人は引き始めはラケットを立てますが,ティエムは寝せて引いています。
それとトップの位置が高い、肩の上です。
ジュニアや女性には見られますが、男性には珍しいトップの位置です。
最初の動画で良くわかりますが、その高いトップから、ほぼ直線的にラケットが出てきてヒットポイント、フォロースルーもほぼ直線上で、フイニッシュの位置はトップの位置とほぼ同じです。
グリップは、通常のウエスタングリップでダブルベント、他のプレーヤーと特段の違いはありませんが・・・
驚きのデータがあります、先日のマドリード・オープンのナダル戦でのデータです。
ボールスピード、スピン量共にナダルを上回っています!
前の記事にも書いてありますが、ナダルはひたすらスイングスピードを上げる為に、誰にも出来ないスイングをしているのです。
http://scrooge.at.webry.info/201606/article_1.html
ナダルは、トップスピンの回転量をより増やす為に、他より上方向にスイングしているので、ボールスピードはそれほど上がりませんが、スイングスピードは非常に速いのです。
しかしスイングスピードと、スピン量は相関関係にある事を考えると、スイングスピードもティエムがナダルより速い事になります。
トップスピンについてはこちらに書いてありますが、上方向へのスイングと、ヒットポイントでラケットを傾けることによるスナップバック効果でスピンがかかります。
http://scrooge.at.webry.info/201703/article_1.html
ただし上方向へのスイングと、スナップバック効果については、スナップバック効果によるほうがスピン量を増す効果が大きいとの認識を持っています。
実は記事の中でも触れていますが、フォアハンドのスイングを円運動として見ると、斜め上方へのスイングは直立する軸に対して合理的(効率的)ではありません、本来ならば軸も傾けないといけないからです。
シングルバックハンドは、軸を傾けて打ちやすいし実際にそうしてるプレヤーも目につきます、ジョコビッチのように、フォアハンドをやや後ろに反り返りながら打つ選手も増えてきつつあります。
その事も踏まえてティエムのスイングを見ると、テイクバックの位置を高く取り、脇を大きく開けて遠いところから振り出し、直線的なスイングプレーンでラケットを加速させるのは理にかなっており、スイングスピードを上げる効果が大きいのでしょう。
※スイングスピードとトップスピンの回転量は相関関係にあると考えていますが、ボールスピードとトップスピンの回転量は相関しません。
上方向へのスイングはある程度スピン量を増す効果はありますが、角度については今後の検証が必要でしょう。
女子のオスタペンコのスイングを見ると、直線的でボールスピードが早く、かつトップスピンの回転数も多いと推測されます。
スピードがあるのでフラットと勘違いされてる人がいますが、現代テニスではフラットボールを打つメリットなどありません。
また、ティエムは昨今の大型選手揃いの中では小柄の部類で、特段パワーがあるとは思えません。
最初の頃の印象では、あんなオーバースイングで思いきりラケットを振り回してたら、試合を勝ち切るのは厳しいと感じてました。
実際、2セット目以降になるとパフオーマンスがかなり落ちてました、また、いずれ無理がたたり故障するのではとすら考えてましたね。
もし、アマチュアがティエムのスイングを形だけ真似ようとしたら、すぐ腕がアガってしまいます。
力任せではあのスイングは続きません。
テイエムのスイングが、効率の良いスィングであるのはわかったとして、では、なぜナダルをも上回るスイングスピードでラケットを振れるのでしょうか?
ここからは推測です、個人的にはこの打ち方には釈然としないモノを感じてますが、一部には根強い考えもあります。
感の鋭い人は、2番目のスローの動画の中で、ラケットが妙な動きをするのを見逃さなかったはずです。
ヒットする瞬間とその後の数コマの動きです。
この動画は分割して、サイドと正面から動きをリンクさせていますが、このふたつの映像は、同時に撮影したのではなく別々の動画を一緒のように見せてるのです。
ヒットポイントでのラケットの動きの違いでそれがわかります、問題なのは左側のサイドからの映像です。
ちなみに元の映像はこちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=P5RxymXebxs
こちらの動画では2回目のフォアハンドのシーンです。
ラケットがボールに当たる瞬間に面がブレます。
ボールが面中心よりやや上側にあたり、一瞬ラケット面が上を向き、そこから通常の面の動きに戻っていきます。
まるでグリップの中にラケットの軸が差し込んであり、自在に回転する仕掛けになってるかのようです(笑)
この事から推測されるのは、テイエムはグリップを非常にゆるく握っている事です。
同じ動画の中で他にもファアハンドのシーンがありますが、このシーンだけに見られます。
たまたまヒットポイントが、オフセンターだったからなのでしょう、おそらくミスショットだったのではないでしょうか?
またこのショットだけ、この打ち方をしたとも考えられません。
※ボレーにはこういう現象がまま見られます。
ラケットがほぼ静止している場合、前に行こうとする動き(スイングする事で発生した運動エネルギー)が無いので、芯をはずすと飛んでくるボールの勢いに押されてしまうからです。
ストロークの場合は、飛んでくるボールに充分対抗する運動エネルギーがラケットに加わっているので、通常の力でグリップを握っていれば、ラケット面がこのように大きく動く事はありません。
これは、実は以前からある打ち方で、「脱力スイング」とも呼ばれています。
上級者やプロの中でも議論になりますね。
ひと口に「脱力」と言っても、スイング中、終始一環として力を抜くものではありません。
むろん、ずっとグリップを強く握りしめてたら速いスイングは出来ません、グリップを握る力についてもいろいろな意見があります。
一朝一夕には出来ないし、必ずしも上達に必要なモノではないと考えます。
ただ、ティエムのスイングスピードの、秘密の一端であるのは確かなようです。
※後日見直したらストロークとサーブに関するデータもありました。
やはりティエムが上回っています、サーブに関してもティエムのほうが速い。