トップスピンについて、集大成のつもりで書きました。
理解がしやすいようにスライスのメカニズムと対比しながら説明してあります。
なぜ回転がかかるのか?メカニズムが理解できればどのように打てば良いかがわかります。
自分としては、最良のスイング理論の構築になっていると自負してます。
まずこの動画を
少し頼り無さそうなおじいさんですが、さりげなく核心をついた話をしています。
打ち方は旧式ですが、他にフォアハンドスライスについての適当な動画が無いので我慢してください。
「逆も真なり」と言う言葉があります。
トップスピンの逆はスライス(アンダースピン)なのでしょうか?
スライス(アンダースピン、横回転・斜め回転もスライスと呼ぶ傾向がありますがここではアンダースピンの意)はラケットを上から下へ振る、一方のトップスピンは下から上へ振ると単純に説明しています。
また、なんの理由の説明もなく、スライスは面をややオープン(上向きに傾ける)にして打っていますが、これが重要な意味を持っています。
ちなみに映像はフォアハンドのスライスですが、バックハンドのスライスも動作打ち方は、まったく同じです。
これは、フォアとバックのトップスピンも同じなのと同様です。
他のテニスに関するブログを時々見ます。
技術や理論に言及したものも多く、面白くもあります。
プロのコーチや元選手のもありますが、中にはピントがずれたり疑問に感じる内容も・・・
テニスについて科学的な研究解析が行われていない証でもあり、実証に裏打ちされていない、言わば正解が見つかっていないのに、推測で解答を書いているようなものですね。
何しろ、基本的な事であるスイングスピードとボールスピードの関連、あるいはスピン量との相関、湿度、温度、気圧変化、コート面の違いによるバウンドの相違、etc
ほとんど実証されたものがありません。
また、ボールの規定の許容範囲が広く、コート面も様々なので実証にしても難しいでしょう。
理論的な事を別にして、体の使い方だけ講釈しても、あまり上達の手助けにはなりませんね
グリップの握り方ひとつにしても、なぜこの握り方をするのかを明解に説明する必要があるのです。
単に厚いグリップで握って、下から上へラケットを振ればトップスピンがかかる-では駄目なのです(笑)
※体の使い方に終始した記事をよく見かけます、おそらく自分自身で会得したものではなく、頭の中で考えた言わば空想を書いてるようです、この手の記事はいくらでも書けてしまうのです。
うまくいかなければ、まだ体の使い方がちゃんと出来ていないから、ですまされてしまいます(笑)
また、体の使い方を示しても、人それぞれで体型や筋肉、あるいは運動神経そのものにも差があります。
机上の論理を説いても仕方がないのです、根本の原理がわかっていれば、そこに至る自分に合った個別の打ち方を模索しながら会得しやすいのです。
道具を使うスポーツの中での事象はすべて科学、特に物理学で説明が付けられます、特にテニスは蓋然性に影響される部分が少ないので、ここに焦点をあてて説明するのが大事です。
最近の動画サイトにUPされる中には興味深いモノがあります、そこから推測される事は実証に近いのでは?と思います。
ウィルソンが、2014年モデルから採用したスナップバック理論を応用したスピンラケットの解説ビデオです。
トップスピンにおけるスナップバック理論については、何度か取り上げています。
前段の話を端折りますので、そちらも読んで下さい。
http://scrooge.at.webry.info/201601/article_1.html
http://scrooge.at.webry.info/201608/article_1.html
トップスピンについては、現代テニスで重用されなから、そのメカニズムは解明されてきませんでした。
ウイルソン社のスナップバック理論は、よりスピンがかかりやすいラケットの発売にあたってのものでしたが、トップスピン(当然スライス回転も)発生のメカニズム自体を説明するものにもなっています。
動画の中に、左方向からボールが飛んできて、上向きに角度を付けた「固定」したラケット面に当たるシーンがあります。
トップスピンの説明に使われてるのですが、これが図らずもスライス回転が起こる説明にもなっています。
本来ならば、下向きに伏せた角度のラケット面に当てれば良いのですが、見え方を考慮したのでしょう。
正に逆も真なり!です。
最近の傾向ですが、試合の中でスライスを打つ場面が多くなってるように感じます。
今まではワイドに振られた時に時間稼ぎに打ったり、タイミングをはずす時に使われる事が多く守備的に使われる事が殆どだったのですが・・・
実は、現在のようにトップスピンが主流になる前からスライスは当たり前のように使われていました。
低く滑るような軌道のスライスは返す方にとって厄介なショットでした。
スピードのあるスライスも、今後は見直されるのかもしれません。
トップスピンとスライスは、単に回転方向が逆だけではなく、その軌道に大きく違いがあります。
それには空気と重力が関係しています。
※ここではドライブ=トップスピンとします。
回転する物体が空気中を飛ぶと、回転方向に引っ張られる特性があります、スライスは上へ、トップスピンは下方向へ動く力が働きます。
これは流体力学によります、重力は一律下方向へ働きます。
テニスボールは重さの割に体積が大きく、さらにメルトンが空気抵抗の影響を強く受け、その動きが顕著になります。
また着地してからのバウンドの違いもありますね。
スライスは低く滑るように、トップスピンは高く弾みます。
回転方向によってバウンドが変わる理由を、明確に説明したものは見た事がありませんね、物理学だけでなく弾道計算なども必要なのでしょう。
またそれが、コート面にも影響を受けるのは経験上わかっています。
ラケットを「固定」して、トップスピンはラケット面を下向きに、スライスは上向きにして、真っ直ぐに飛んで来る(現実にはありません、必ず重力の影響を受け放物線になります)ボールに当てたとしたら?
どうなるでしょうか?
ここのポイントはラケットは動かさない事です、スイングによる力はボールに伝わりません。
それぞれの回転はかかりますが、ボールは面を傾けた角度の方向に一旦飛び出す事になります、それから重力の影響を受け徐々に落下します。
Wilson社の実験映像でわかりますが、スライスは一旦浮き上がっています、トップスピンの場合は下へ飛び出すようになると予想されます。
ドロップショット、ドロップボレーのイメージですね。
※飛び出す角度は入射角と反射角と呼ばれるもので説明が出来ます、ただし衝突する物体が、回転している場合やその回転量、及びぶつかるモノの硬度や弾性によって角度・勢いが変わります。
ここで重要なのはラケット面を傾ける事です、垂直な面では回転は起こらず、重力による下向きの力だけが働きます。
※なぜ傾けた面では回転(順・逆)が起こり、垂直面では回転が起こらないのか?はWilson社のスナップバック理論の説明の中にはありません。
前段の記事の中で推論として説明してます。
また、縦横の本数のバランスについても、各社でいろいろ試行されていて、HEAD社からは縦糸の本数を減らしたモノも発売されています
これはラケットをほぼ固定して打つ場合で、ラケットをスイングして打った場合は、ボールの軌道はかなり異なります。
トッププレヤーは、どのようにして打っているのでしょうか?
フェデラーの映像です。
ラケット面にボールが当たった直後の動きは、想定通りですが、その後の軌道がラケットを「固定」した場合と異なりボールが伸びていきます。
ラケットをスイングする事で発生した運動エネルギーが、この違いになっているのでしょう。
また、ラケット自体のフレームのしなり、ストリングスのたわみ、ボールの変形からの復元などもありますね、これらは固定した場合も働きますが、その度合いが違うのでしょう。
個々のファクター同士の関連のしかた、スイングする事で発生する運動エネルギーの量による違いなど、複雑に絡み合っていると思われます。
この事象を読み解くには高度な解析が必要でしょう、ラケットのスイングマシーンを開発してもわからないかもしれません。
こちらはスライスの打ち方をレクチャーしている動画です、この中でラケット面の傾きでスライス回転を調整すると述べています。
これは、そのままトップスピンにも当てはまるのです。
また、スピードの出るフォアハンドスライスの打ち方も述べてますが、これがトップスピンのファアハンドにもそのまま通じます。
打ち方ですが、ラケット面をやや上向きにして平行スイングで打っています。
この感じが掴めたら、ラケット面をやや下向きに角度を付けて、同じように打てば、スピードのあるトップスピン(回転量が少ない)になります。
ここでも逆も真なりです。
面を傾けて打つという事はこう言う事なのです。
この打ち方で、トップスピンをかけられる事には重要な意味があります。
なぜなら、下から上へラケットをスイングしなくてもトップスピンがかかるのです。
これは、Wilson社のネーミングによる「スナップバック効果」のおかげに他ならないのです。
※次の記事でティエムのフォアハンドを解析していますが、彼のスイングは直線的にもかかわらずハードなトップスピンがかかっています。
当然ながらヒットポイントでラケットに角度をつけて打っていますね。
ラケット面とボールの接触している時間はほんの数ミリセカンドです、しかし高速度撮影された画像では、ボールが接触したままでのストリングスのたわみとズレが、はっきり捉えられています。
上下にラケット面を動かす事によって発生する回転より、傾けたラケット面のストリングスの動きによる回転のほうが、より多くの割合を占めているのでしょうね。
この動画はアニメーションですが回転が起こるイメージはわかります。
※一部ではトップスピン回転の少ないボールを「フラットドライブ」などと呼んでいます、意味の良くわからない造語で日本だけで使われています。
また、スピードのあるトップスピンをフラットと感違いしているムキもあります。
試合中継のボールの回転をよく見ればわかりますね。
プロレベルの試合では、明らかなスライスをのぞけば、ボールの回転はほぼ全部がトップスピン(順回転)です。
現代テニスにおいては、あえてフラットボールを打つメリットなどありません、中級以下のアマチュアではトップスピンを打とうとして、意図せずフラットになってしまう事はいくらでもありますが(笑)
尚、トップスピンを打つ場合に、ラケット面に角度を付けるとボールに当てにくく(ラケット面が狭まる)なるので、打ち出し方向に対して直角にすると書いてるものがあります。
ボールが飛んでくる方向に対してラケット面を垂直にして当てる事は、ラケットの運動エネルギーを効率よくボールに伝えるのも確かです、少し古い?動画や解説(冒頭の動画でもトップスピンはラケット面をverticalにと言ってます、しかし詳細に見るとやや伏せてる)に見受けられます。
しかしこれでは、スナップバック効果がほとんど得られません、フェデラーやジョコビッチのショットを見てもトップスピンを打つ時は、ラケット面に角度を付けています。
スライスを打つ時に角度を付けて打つのなら、その逆であるトップスピンも当然そうあるべきですね。
※中にはボールの上側を打つと順回転がかかると書いてるものがあります、これは面を傾けて打つ事と同義ですね(笑)
トップスピンは自然にかかるという事はありません、意識してかけるものです。
ここが抜け落ちてる解説が目につきます、どうしてトップスピンがかかるのかを説明出来なければ意味がありません。
錦織が試合中にヒットポイントでのラケットの角度をイメージしているシーンです、他の選手にも見る事が出来ます。
ラケット面を垂直にすると、トップスピンがかからないという事ではありません。
以前の記事に書いた、ラケット面を上下に動かす事による摩擦orストリングスの引っ掛け?による効果があると思われます。
※かつてボルグはストリングスを異常なほど強く貼り(80ポンド超)、下から上へ振り上げてトップスピンをかけていました、これはこの効果を狙っての事だと思われます。
ただし、下から上へラケットをスイングして正確にボールをヒットするのは難しいのです、現在主流のライジング打法では尚更です。
振り上げる角度が急過ぎても、前方への勢いが削がれます。
また、スイングに角度をつけるなら、スイング軸も傾けないと効率の良いスイング回転が出来ません。
ジョコビッチが時々見せる後ろに反り返りながらのスイングも、そのあたりの事だと考えられます。
下から上へのスイングをしっかり意識してても、ヒットポイントでのラケット面の角度を意識していないと飛びすぎ(俗にフカすと言います)てしまいます。
ボールに順回転がほとんどかかってない状態です、飛びを押さえる為にスイング幅で調整しようとすると、勢いのないただの棒球になってしまいます。
トップスピンの原理が理解出来ても自在に打つのは難しいのです。
※なぜかラケット面を垂直にする事に固執する方がいます。
その気持で打てと言う意味ではなさそうです。
初級レベルの人に下から上へスイングして、かつラケット面に角度を付けて打てと言っても難易度が高いかもしれません。
しかし少なくとも中級以上であれば、ヒットポイントでの面の角度を意識しないと上達は望めません。
なにより、動画や画像をみれば一目瞭然です。
自分の考えに固執するのはわからないでもありません、しかし目の前にあるのが事実なのです。
フェデラーの練習風景です。
ほぼ真横からなのでヒットポイント時のラケット面の傾きがトップスピン、スライス共に良くわかります。
たまたま垂直面で打ってる動画を引っ張り出して説明しても、説得力はありませんね。
トッププレヤーが、試行錯誤しながら完成したスイングが理にかなってないはずはありません。
意識してても、テニスのスイングはなかなか思うようにはいかないものです。
しかし間違った認識でスイングするのとでは大きな違いがあります。
年令といい、長期の休養明けでグランドスラムに勝つのは素晴らしい事で、偉大なプレーヤーである事をあらためて示しました。
彼のスイングは少なくともここ10年間は変わっていません。
もちろん史上最高と評されるプレーヤーですから、類まれな運動能力とセンスを持ち合わせているのでしょう。
ただ、彼のスイングは特別なものではありません、アマチュアでも大いに参考になります。
言い換えれば、実証されたものが少ないテニスにおいて、基本となるべきものなのです。