今、世の中情報にあふれ、様々なメデイアを通して大量に発信されているけど、疑問に思う内容や報道姿勢も多々あるし、流言飛語に惑わされる日本人の特性がそこに浮かび上がる。 裏にそれを利用しようとするモノの存在が見え隠れする事も・・・ まあ大上段から切るような大袈裟なものではなく気楽に書いてみます。

フラット系って? それトップスピンです!

先日、TVでテニス中継を観てたら解説者がやたら「フラット系」を連呼してました。

曰くフラット系だからスピードがある、フラット系はこのコートに合っているなどなど・・・

前後の試合の状況から、スピードがあるトップスピンの事を指して言っているようです。

さすがにフラットとは言いませんが(笑)

上級者同士の会話でも使う人がいますが、言わんとするところはわかりますが、初中級者には誤解を与えやすいですね。

プロの試合ではもちろん上級者同士の試合でも、フラットを打つ人などいません。

一定以上のスイングスピードでラケットを振れるなら、トップスピンで打つほうがはるかにメリットがあるからです。

プロのコメントでたまに「フラット」と言う選手がいますが、むろん速いトップスピンの事です。

昔のフラットボールの概念は頭にすらないようです。

今は、しっかりした指導をしているテニススクールなら、初心者にボールが飛んでくる方向に垂直にラケット面を当てる、などと教えるコーチなどいないでしょう。

初心者が使ってる軽い厚ラケでそんな打ち方をしたら、コート内に入れる事すらおぼつきません、フラットなど、時代錯誤でしかなく教える必要性すらないでしょう。

プロの試合を注視して観ていると、流行のスイング・ショットがあります。

真似をするのはそれが試合で有効であるからで、奇をてらったり見せるためのものではありません、プロでも常に新しいものを模索しているのです。

今はプロの男子の試合では、直線的な軌道のスピードのあるトップスピンがゲームを支配していて、このショットを打てなければ勝つ事は難しくなっています、ティエム、デルポトロが特に得意としています。

参照

  • ティエムのフォアハンドの秘密
  • デルポトロのフォアハンド
  • 女子でもオスタペンコ、ムグルッサなどがいますね。

    先日の東レパンパシフィックオープンで、象徴的な試合がありました。

    土居とジョルジの試合です、ジョルジはイタリアの選手で26才、若手とは言えませんが今年のウインブルドンでベスト8に入っています。

    ランキングは50位前後で現在のランクは土居より上ですが、土居も50位以内に入った事があります。

    結果はジョルジのストレート勝ちでしたが、土居はまったく歯が立ちませんでした。

    その後、第1シードのウオズニアッキにも勝ちました。

    土居はベースライン近辺からのストローク主体で、スイングプレーンをかなり上向きにしたトップスピンです。

    確実性はあるけどスピードが遅く、山なりに近い軌道で着地してから高く弾みます。

    一方のジョルジはベースラインからのトップスピンのストローク主体なのは同じですが、球質がまったく違います。

    軌道が直線的でボールスピードが速い、ボールは鋭角的にコート面に着地するので土居のようには高く弾みません。

    ※トップスピンの回転量が少ないからボールスピードが速いとの誤解があるようですが、ティエムのデータからもボールのスピードとトップスピンの回転量に相関はありません。

    では、この軌道が直線的でスピードがあるトップスピンのショットを考えてみます。

    トップスピンの打法、理論については何度も書いています。

    それを理解しないとこのショットについての解析も理解出来ません。

    参照

  • トップスピンとスライスのメカニズム
  • トップスピンの理論と根拠
  • まず直線的な軌道の点を、比較の為にサーブの軌道を考えてみます。

    フラットサーブをベースラインから打ち、サービスラインの内側に入れる為には約270cmの高さから打つ必要があります。

    参照

  • サーブの作法
  • これをこのショットに置き換えると、ベースライン上から相手側ベースライン上に打つには、約190cm(厳密には182.8cm)の高さが必要になります。

    自分のベースラインの内側に入るほどこの高さ=打点は低くなり(理論的にはネットの高さである91.4cmまで)、外側に出るほど高くなります、ストレートとクロスでも違いがあります。

    ちなみに自サービスライン上では140cmです。

    ジョルジの場合、胸の高さあたりが1番威力があるボールを打ててるようです。

    ジョルジの身長は168cmですので130cm前後でしょう。

    スイングスピードについて、スイング軸をコートに直立した軸として考えると、水平に近いスイングプレーンでラケットを振るのが最もスイングスピードを上げやすく、また安定します。

    自分でラケットを振ってみてください。

    肩より下、腰より上、つまりほぼ胸のあたりの高さが、最も早くラケットを振れる高さなのが理解できます。

    ただしこの高さは絶対値ではなく、身長の高さによって変わります、この点でも身長の高さはアドバンテージになります、同じ打点の高さであれば、より水平に近い角度でラケットを振れるからです。

    また、この事から考えて純粋な直線の軌道ではなく放物線である事もわかります、トップスピンで打つ事はこのショットにおいても必然なのです。

    トップスピンの理論の中で、斜め上向きのスイングプレーンでスイングする事、スナップバック効果の観点からヒットポイントでラケット面を下向きにする事、が重要であるのは理解されてるでしょう。

    スピンの回転量に関してはスナップバック効果の割合が大きいと考えています。

    スイングプレーンの角度とラケット面の角度、スイングスピード、は密接に関連しています、ボールスピードとスピン量にも関わっています。

    ボールスピードとスイングスピードは相関関係にあります。

    ラケットを振る運動エネルギーが大きいほど、ボールに伝わる運動エネルギーも大きくなるからです。

    ただし斜め上方に振る角度によって伝わる運動エネルギーが変わります、水平に近くなるほど効率が良くなります。

    ※下向きのスイングプレーンについては、複雑で別の要素もからむ為今回は検証しません。

    水平に近くなるほど、斜め上方に振る事によるトップスピンはかからなくなります、それを補うのがスナップバック効果です。

    スナップバックは、スイングスピードが速い=運動エネルギーが大きい ほど効果が大きいと考えられます。

    ただし、ヒットポイントでのラケット面の角度との関連については、今後の検証が必要です。

    このショットを打つには、高い打点とより早いスイングスピードが必要です、筋力の劣る女子には難しいショットですが、パワー系のラケットとポリエステルストリングが認知され、女子でも打てるようになってきました。

    女子の間で、パワー系(特にバボラ社)のラケットを使用する選手が増えた事と無縁ではありませんね。

    付記

    プロの試合の観戦記のようなものを書かれてる方がいます。

    この手のモノは主観が入りやすいし、書き手のテニスのレベルが伺われるものです。

    最近は試合のスタッツがすぐ集計されます、曰くファーストサービスのポイント率だとか、アンフォースドエラーの数だとか

    シングルスは1対1の勝負であり、駆け引きの部分も大きいのです、攻めに行った結果がミスに繋がる事もありデータがすべてではありませんね。

    他のスポーツでも同じですが、ある程度のレベルでないと安易に語れるものではないと考えています。

    また、プロの試合でフラットを多用?などと書いてるものもありますが、この記事でも言及した「フラット系」の意味であればわかりますが、もし従来のフラットの意味であれば間違いでしょう。

    日頃、ママさん相手の羽子板テニスをされてるのならそんな考えに至るかもしれませんが

    県大会やインカレの予選クラスの試合を生で見られたらわかります、上位のアマチュアでさえフラットは打ちません、プロであれば尚更です。