テニスの「フォーム」についていろいろ議論があるようです。
中には打ったボールが良ければそれで良い!などと言う乱暴?な意見もあります。
フォームなど気にせず、ボールの行方だけ見てればそれで良いのでしょうか?。
その背景には、飛んでくるボールは、コース、高低や速度、回転が様々で同じフォームで打つのは無理があるからという理由もあります。
それに、フォームと言ってもストローク、サーブ、ボレー、スマッシュ等々沢山あります。
※ここでのフォームは、フォアハンドストロークとします。
また、オープンスタンスが登場し広まり、それまでのフォームの概念が、大きく変わってしまった事もあげられます。
では、テニスにおける「フォーム」とはなんでしょうか?
仮に、まったくの初心者にラケットを与えてなるべく同じところに打ち返しなさい!と指示したらどうでしょうか?
始めはコースも飛距離もバラバラで、もしかするとまともにラケットに当たらないもしれませんが、よほどの運動音痴でない限りそのうちにまとまりだすでしょう。
「フォーム」が同じだから同じところへボールが行くのです。
この場合「フォーム」の主たる目的はボールのコントロールです。
ここにも「フォーム」の真理があります。
ボールをコントロールするのもフォームです。
では、どんなフォームが良いのか?
ボールコントロールだけで良いのでしょうか?
強いボールが打てる?トップスピンがかかる?
テニスのスイングが、物理的法則に基づく回転運動と考えると、理想のフォームの姿が見えてきます。
理想とするところは、効率よく身体を使い、ボールコントロールが出来て、スイングスピードが早いフォームに他ならないのですが
現代テニスのようにトップスピンが重用されていれば、尚更です。(スイングスピードとトップスピンの回転数は相関関係にあると考えられます。※この事すら実証されていませんが・・・)
つまるところ、理想のフォームはひとつしかない事になります。
パワー(スピード)がありスピンが効いていて、かつコントロールされたボールを打てるフォームです。
しかし理想のフォームが、その人にとって最良のフォームとは限りませんね。
理想を目指す努力は大事ですが、個人の運動能力(才能)には限界があり、それほど向上するものではありません、また体型・体格も大きく関係します。
必ずしも皆が理想的(効率的)なフォームを目指す必要はないのです。
理想のフォームとは人それぞれであるのです
※日本人の特性なのか、手本を示し、その通りにしなさいと指導するほうが受け入れられるようです。
一方で教えやすい事もあります。
フォームの定義ですが、ボールをヒットする前からヒットした後までの定型的な体の動きではありません。
ボールを迎える構え、そしてバックスイングの位置(トップ)。
この2つだけです。
特にバックスイングのトップの位置は重要です。
ただしこの2つに関しては、位置(回転軸からの距離)は常に一定でなければいけません。
関連してこれも重要ですが、ダブルベントかストレートアームのどちらかにする事です。
スタンスについてですが、スタンスは二次的なものです、スタンスが違っても、構えトップは変わりません。
軸足をどこに置くか?で、オープンスタンス、平行スタンス、スクエアスタンスになり、現代テニスでは境界は曖昧になっていて、プロレベルでは自在に変えています。
ただ、個々のスタンスに応じてヒットポイントが変わるので、アマチュアレベルでは、なるべく固定したほうが良いでしょう。
スイングの最初と言わば折り返しの起点であり、ラケットがほぼ静止するポイントでもあります。
※最近の傾向として、トップの位置で止めずに瞬時に切り返す打ち方をするプレーヤーがいます(ソック、キリオス、トミック等)、難しいテクニックですがやはり安定感がないですね。
もうひとつがグリップです、常に同じグリップである必要があります、厚い薄いは関係ありません。
構えの位置をAとしトップの位置をBとします。
A→B間はどんな軌道でラケットを引こうが関係ありません、最短距離である必要もありません。
トッププロでも様々でかつてのレンドル、サンプラスは肘をかなり上に上げて引いていました。
Bからはフォワードスイングになりますが、ここからヒットポイントまでは円周上(スイングプレーン)を通らなければスイングスピードを上げる事が出来ないし、正確にボールをヒットするのが難しくなります。
また、ヒットポイントの位置の高低に合わせたり、スピン量の調整のために、B点からヒットポイントを結ぶ線のスイング角度を変える必要があります。
スイングプレーンの地面に対する角度はいつも同じではないのです。
※ヒットポイント後のプロネーションについては
http://scrooge.at.webry.info/201501/article_1.html
※ダブルベントとストレートアームについては
http://scrooge.at.webry.info/201310/article_1.html
ここまでの話はあくまでもフォーム=型、の話です。
どのタイミングで構えに入り、またそこからバックスイングに移り、そしてトップで切り返すのか?
軸足に重心を乗せるにしても、構えとトップの位置では微妙に変わります。
また、腕だけでなくボデイターンの動きもありますね。
フォームは型だけではないのです。
人間は本来、不器用な動物です。
ボールに合わせて、臨機応変に打ち方を変えるのはとても難しいのです。
反復練習で身体に染み込ませる必要があります。
※日本のスクールにはボールマシンを活用している所がほとんどありません。
同じボールを続けて打つ事は、フォームを創る上ではとても大事な練習です。
人間のコーチは100球同じところに球出しは出来ません(笑)
交互のストロークの練習なら尚更です。
尚、中級以上であれば壁打ちは百害あって一利無しです。
では、どうすれば自分に合ったフォームを身に付けられるのか?
最善の方法は、優秀なパーソナルコーチを雇う事です。
アマチュアのウイークエンドプレーヤーには、現実的な話ではないでしょうし、商業主義のテニススクールでも無理な話です。
テニススクールはテニスを快適に楽しむ場であるし、大多数の人がそれを望んでるからです。
上昇指向のある人や、個別にちゃんとした指導を受けたい人は、それなりのお金がかかるという事です。
十把一からげで90分を楽しませるのもコーチの技量なのです(笑)。
では、専門的なテニスコーチに教わらずに、自分より上手な人に教わるのはどうでしょうか?
あるいは本・雑誌や、ブログの記事、動画から学ぶのは?
なかなか難しいと言わざるをえません。
上級者と言えども所詮アマチュアです、教え方が上手とは限らないし、感覚的に理解してる事が多く、言葉にして教えるのはさらに難しいのです。
引退したプロ選手が、体幹と軸を混同しているのを聞いたことが有ります。
他の情報にしても玉石混交でどれが正しいのやら・・・
テニス雑誌や本は、「一般的」な読者に受け入れられるように書いてあるので、いちいち内容に噛み付いてもしょうがないのです(笑)
また、画像や動画にしても理論とは程遠いような打ち方をしたものもあります、そのようなものを手本にしたらいつまでも上達は出来ません。
それに、カメラ位置や撮影の角度によって誤った印象を与える事があります。
個人が発信しているブログも見ますが、単なる思いつきや、実証が少ないのをいい事に、首を傾げざるを得ない内容なものがあります。
以前ですが、ストロークは曲げた膝を伸ばしながら打つ!と書いてあるのを真に受けて、ずっとそのくせが抜けませんでした。
l理想的な体の使い方を示すのは容易です、それを自分が如何に取り入れるか?
が大事なのです。
理想論や現状のテニスの批判に終始して、個人が参考にするには具体的にどうすれば?を書いていない(書けない)ものが多いですね。
最近になってようやくテニスにも科学的データを基にした解析がされるようになってきました、ボールやストリングスの動きを高速度撮影する事で明らかになってきた事実は、それまでの固定概念を覆しつつあります、
※2014年にWilson社の提唱したスナップバック理論は、ストリングスがボールの回転に及ぼす影響を明らかにしました。これは非常にエポックメイキングな事でした。
http://scrooge.at.webry.info/201703/article_1.html
こちらも参考に、ポリエステルストリングスの見地から書いてあります。
https://kawazoe-lab.com/wp-content/uploads/2016/06/20110006.pdf
道具を使うスポーツは、背景に物理的な事象があります。
科学的な見地で実証された事実には、感覚的なモノが入る余地はありません。
個別のフォームを模索するのも、科学的に実証された根拠に基づいたものでなければならないのです。
※未だにヒットポイントでラケット面を地面に対して垂直にする、などと書いてるものがあります、スナップバック理論の観点からも、トップ選手のヒットポイントの瞬間の画像からもそうでない事は明らかです。
トップ選手にしても原理を理解して、角度を付けて打っているとは思えませんが、そうしなければいけない事を経験上わかっているのです、体力も才能も劣るアマチュアならば最初から原理を理解してそうするべきなのです。
http://scrooge.at.webry.info/201605/article_2.html
http://scrooge.at.webry.info/201608/article_1.html
※飛んでくる方向に対してラケット面を90度(直角?)にすると書かれてるのもありますが、ライジングで打つ場合(上昇してくるボールを打つので、当然ラケット面が下向きになる)でもない限り、落下してくる途中を打つ事になり、ラケット面は空を向く事になります、打ち出し方向が上方向で、スナップバックによる回転がかからないので、かなり下からラケットを振り上げないと(下から上昇するラケット面で打つ事でスピンをかける)、ボールはコート内に収まりません。
レベルスイングでも、ヒットポイントで面を傾けて打つだけで、トップスピンがかかるのです。
自分で実践すれば理解出来る事であり、スナップバック理論が正しい証明です。
あえてそんな事に固執する必要などありませんね。
科学的な解析が進んでる、ゴルフスイングや野球のバッテイングについては、個人の思い込みや、いい加減な発想に基づいた自己流の解説などはあまり見かけません。
フォームと共に重要なのは、ヒットポイントを一定にする事です、そもそも同じヒットポイントで打つ事がフォームの前提なのです。
申し合わせのラリーと違い試合になると、同一の軌道・種類のボールはまず来ません、ヒットポイントが違うと、一定のフォームで打ったとしても、ボールはコースや飛距離が安定しません。
飛んでいくはずのコースや飛距離に合わせる為に、バックスイングの位置やラケット面の角度などを
その都度調整してしまいます。
押し込まれたり振られたりした時のテクニックとしては有り得ますが、繰り返してる内に自分本来のフォームを見失い、ゆきあたりばったりのフォームになり、せっかく身につけたフォームが意味をなさなくなります。
中級あたりでなかなか上達しない人に多く見られ、本人は今日は調子が悪いくらいに思うのでしょうが、自分のヒットポイントで安定して打ててない事に原因があるのです。
ゴルフにしろ卓球、野球のバッティングでは最適なヒットポイントまで大きく足を動かすことはありませんが
テニスではサイドからサイド、ベースラインからネット近くまで走らなければならない事があります。
ボールの軌道を見極め、適切なヒットポイントまで足を動かさなければせっかく身に付けたフォームも役に立ちません。
フットワークが大切ですが、これは体力(脚力)の程度が要素になります、スイングはそれほど体力(腕力)は大きな要素にはなりません、軽量ラケットや厚ラケでカバー出来るからです。
他のスポーツに比べ年令のピークが早い要因ですね。